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バッテリモデル:電気自動車におけるリチウムイオンバッテリ性能の劣化予測

Guest Blog - Matija Matijasic December 17, 2020

このブログでは、クロアチアのRimac Automobili社がモデロン製電動化ライブラリ (Electrification Library) を使用した的確なバッテリのモデル化についてご紹介します。この実証済みモデルベースのアプローチにより、他のシミュレーション目的ですでに検証されている電気・熱ダイナミクスモデルに劣化モデルを簡単に追加できます。

高性能バッテリシステムの設計

ハイパー電気自動車で知られるRimac Automobili社は、自動車業界で最も要求の高いプロジェクトにバッテリソリューションを提供しています。Rimac社はさまざまなプロジェクトで異なる種類のバッテリを使用していますが、それぞれのバッテリセルは化学性能とメカニズムが異なるため、その特性も異なります。

必要な車両走行距離と最適な性能を長期にわたって提供する電気自動車のパワートレインを開発するために、エンジニアには、使用後にバッテリセルの性能がどのように低下するかを推測し、またセルの劣化と「寿命」の複雑なプロセスを考慮することが求められます。これらは、適切なバッテリセルの選択、バッテリセルを多く使うバッテリモジュールの設計、制御戦略の最適化、および自動車のメンテナンスの見積りなどを考慮するために必要なことです。

   

実験室でのバッテリセルの劣化を予測する際の課題

バッテリセルの性能が劣化によってどのように変化するかを正しく推測するために、様々な動作条件で検証実験を行いました。Rimac社は、自社の実験施設で使用するバッテリセルの耐久性を評価しています。

実験室では、人工気候室で様々な動作環境での定電流充放電のサイクル実験でセルを検証します。実験では、セルの電圧、電流、キャパシティ、環境温度とセルの表面温度などを測定します。充放電のサイクルを定期的に停止、セルの性能テストでセルのキャパシティとインピーダンスの変化特性を決定しました。

このようなサイクル実験は非常に時間がかかるため、改善することがバッテリ技術の急速発展に対しては必要不可欠な課題です。電流レート、動作温度、および放電深度を上げることにより、これらのバッテリの劣化実験を加速することができますが、実際の車両でセルがさらされるすべての動作条件でセルがどのように劣化するかを評価することは、依然として大きな課題です。

Rimac社の実験室で様々な動作環境で検証されるセル

動的バッテリモデルのシミュレーションによる劣化予測

さまざまなシナリオでバッテリの劣化を予測できるようにするために、Rimac社はモデロンの電動化ライブラリに装備されているバッテリモデルを幅広いアプリケーションで使用しています。これらのモデルのモジュール構成により、他のシミュレーション目的ですでに検証されている電気や熱ダイナミクスに劣化ダイナミクスを簡単に追加することができました。

これらのモデルを使用すると、実験で行うときには非常に多くの時間とリソースを必要とする方法と変わらず、複雑なドライブサイクル入力の大規模なセットを評価できます。バッテリセルの劣化モデルの特性をパラメータ化するには、さまざまな電流レート、温度、および充電状態(SOC)について実験データを収集する必要があります。限られた実験施設を活用するために、劣化サイクル実験は、劣化モデルのパラメータ化に必要な最大限のデータを提供できるよう設計されました。

方程式ベースのバッテリモデル

バッテリの劣化モデルは、電気化学モデルと経験値モデルに分けることができます。前者は、特定のセル化学の電気化学的劣化について表しています。しかし、分子レベルで起こっていることと操作レベルの観察との間の関係はまだ十分であるとは考えられていません。したがって、Rimac社は、システムシミュレーションの経験値モデルに焦点を当てることにしました。

はじめに、LFP(LiFePO4)セルの半経験的モデル(電動化ライブラリにもあります)の評価を行いました。このモデルは、LFPおよび同様の劣化メカニズムを持つ他の化学物質に適用可能な法則の関係に基づいています。この方程式ベースのバッテリモデルの利点は、特定のセルバリアントの特性への適合に必要なパラメータの数が非常に少ないことです。[Wangらの論文参照]

しかし、実験結果と完全に一致するシミュレーション結果がないことも想定しており、一つのセルタイプだけでも一般的な劣化シミュレーション結果と実験結果が一致すれば、モデル特性の表現が適切であることが考えられます。プロット(図1)は、実験で特徴付けられた3種類のセルと、このデータに適合した結果のバッテリモデルを示しています。このバッテリモデルは、一部のセルタイプおよびシナリオに適している可能性があると結論付けられました。このタイプのバッテリモデルの拡張バリアントは、依然として有用であることが証明される可能性があります。しかし、今のところ、シミュレーションが必要なすべての異なるセルとシナリオの劣化ダイナミクスを正確にとらえるには十分ではありません。より一般的なアプローチが望まれていました。

図1:3つの異なるセルタイプ(NCAおよびLFP)の測定に適合した方程式ベースのモデル。測定データと一致するのは評価範囲(80%SOH)のセルタイプの1つでのみ達成。

   

柔軟なテーブルベースのバッテリモデル

Rimac社とモデロンのコラボレーションの最新の成果は、電動化ライブラリ ver 1.5に新しいテーブルベースの劣化モデルが導入されたことです。これらは、ノミナルなセル特性(キャパシティとインピーダンス)が時間の経過とともにどのように変化するかを説明する完全に経験値バッテリモデルです。これらのバッテリモデルは、電流と温度の表形式の関数としてパラメータ化された劣化係数の形でこれらの特性の変化を記述します。

最も簡単な変数テーブルモデルでは、このような劣化係数は、電流スループットの累積結果から定義された陽関数となります。実験での測定データのパラメータ化は非常に簡単となり、測定実験の内容はよくあるバッテリ実験と同じです。バッテリモデルでは、さまざまな電流レートと温度について、複数のデータセット間の補間が可能です。より一般的なバッテリモデルも利用可能であり、劣化係数の勾配がすべての動作点に対してパラメータ化されます。これにより、より詳細なダイナミクスをとらえることができますが、モデルをパラメータ化するために実験データの前処理を増やす必要があります。

バッテリ劣化モデルの検証

バッテリの劣化モデルは、図2に示した実験室と同じ境界条件(環境温度と初期SoC)を再現したモデルで検証します。モデロンの電動化ライブラリのBatteryCyclerコンポーネントを使用し、実験と同じ電力プロファイルと測定時間を搭載しました。劣化ダイナミクスに加え、バッテリセルモデルには、以前の実験で検証された電気ダイナミクス(SOCとインピーダンス、熱依存性)が含まれていました。

図2:実験を再現したモデル

Battery Modeling Simulation Software

プロットは、電流と有効容量の劣化係数を示しています。シミュレートされたキャパシティロスは、実験データと完全に一致します。バッテリモデルは境界条件のパラメータ化が適切であることを確認してから、複数の補間されたテーブルデータで劣化予測の精度を検証するための実験が行われました。

図3:検証実験 - 実験を再現した定電流放電モデル

図4:検証実験 – 異なる電流レート間の補間

図5:検証実験 – 実験を再現したダイナミクス電流変化

   

結論

モデロンの電動化ライブラリに柔軟なテーブルベース劣化モデルが導入されたことで、Rimac社は、電気自動車の実際走行モードで、異なる種類のバッテリ状態をシミュレーションで再現できるようになりました。実験データとシミュレーション結果を組み合わせることで、車両の走行距離をより正確に推測でき、指定された動作環境と特定のバッテリの種類を提案することができます。

参照

[Wang et al. 2011] Cycle-life model for graphite-LiFePO4 cells, Journal of Power Sources, Volume 196, Issue 8, 15 April 2011

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